奴隷制を廃止する法律を、議会で成立させたい。でも、反対する議員も多い——。大統領リンカーンは、立場のちがう相手を、どうやって説得していくのか。この記事では、この映画から「相手を説得する力」を学びます。
特集「アサーティブコミュニケーション」第7回の教材です。
これまで「伝える」「聴く」「対立と対話」などを学びました。その集大成が、「相手を説得する」ことです。立場も考えもちがう相手に、どう「動いてもらう」か。
➡ リンカーンは、命令や脅しではなく、相手を理解し、言葉を選んで説得しました。
「説得」というと、正しさで相手を言い負かすことだと思いがちです。でも、それでは相手は納得して動いてくれません。
① 自分の正しさだけを主張し、相手の事情を見ない
② 相手を否定してから説明する(相手は心を閉じる)
③ 同じ言い方を、どんな相手にもくり返す
リンカーンは、この逆をいきました。
1865年、アメリカは南北戦争の末期。リンカーン大統領は、奴隷制を永久になくす法律(憲法修正第13条)を、議会で可決させようとします。
しかし、賛成の票は足りません。リンカーンは、反対派や、まだ迷っている議員たちを、一人ひとり、ちがう方法で説得していきます。
大きな理想を語り、たとえ話で心を動かし、時に現実的な取引もしながら、歴史を変える一票を集めていく——実話をもとにした物語です。
当時のアメリカでは、奴隷制——人を財産として売り買いする制度——が南部で続いていました。その是非をめぐって、国が南北に分かれて戦ったのが南北戦争です。
1865年に成立した、アメリカ合衆国憲法の修正条項で、奴隷制を正式に禁止したものです。この映画は、その法律が議会で可決されるまでの、数か月の攻防を描いています。
『ジョーズ』『E.T.』『ジュラシック・パーク』などで知られる、世界的な巨匠。この映画では、派手な戦闘ではなく、「言葉で歴史を動かす」政治の駆け引きを、じっくり描きました。
役に徹底的に入りこむことで知られる名優。この演技でアカデミー主演男優賞を受賞しました。
奴隷制の廃止を強く求める議員。理想と現実の間で、どう発言するかが見どころです。
- ① 相手をよく知るその議員が何を大切にし、何を恐れているかを把握してから話す。
- ② 「理」と「情」を使い分ける大きな理想(大義)で心を動かし、たとえ話で分かりやすく納得させる。
- ③ 相手に合わせて言い方を変える同じ内容でも、相手ごとに切り口を変える。
- ④ 粘り強く、現実的にも動くあきらめず、時に現実的な妥協や取引もして、一票ずつ集める。
目的が正しければ、どんな手段でもよいのでしょうか? 映画には現実的な「取引」の場面もあります。「正しい目的」と「使ってよい手段」のバランスも、考えてみましょう。
➡ 説得は「勝つこと」ではなく、相手と一緒に、より良い結論へ進むことです。
🌱 今日のまとめ
説得とは、正しさで相手を屈服させることではありません。
- 説得の前に、まず相手の立場・利害を知る。
- 「あなたにとっての意味」を、相手の言葉で語る。
- 論理(理)と、たとえ話(情)を使い分ける。
- 誠実さと信頼を土台に、粘り強く。
- 目的だけでなく、使う手段のよさも考える。
これが、『リンカーン』からもらえる、いちばん大切なプレゼントです。
リンカーンは、難しい話をするときに、よく短い「たとえ話」や小話を使ったことで知られます。相手の緊張をほぐし、本質を伝える——これも、立派な説得の技術です。