「祖国のために戦え!」──先生の熱い演説に心を動かされ、17歳のパウルは仲間と一緒に軍に志願します。けれど、たどり着いた戦場は、聞かされていた「栄光」とはまったく違う場所でした。この記事では、戦争を美しく見せる言葉を、どう見抜くかを考えます。
- 1917 命をかけた伝令
- 西部戦線異状なし(この記事)
- ダンケルク
- シンドラーのリスト
- 硫黄島からの手紙
- ガンジー
- ブリッジ・オブ・スパイ
- ホテル・ルワンダ
戦争が始まるとき、多くの国で「名誉」「英雄」「すぐに勝てる」といった言葉が使われてきました。若者たちは、その言葉を信じて戦場へ向かいました。
➡ この映画は、ドイツ兵の目から、言葉と現実の大きなずれを描きます。特集第1回『1917』と同じ第一次世界大戦を、今度は「相手側」から見てみましょう。
- 📕 原作は1929年の小説ドイツの作家エーリヒ・マリア・レマルクが、自らの従軍体験をもとに書いた世界的ベストセラーです。
- 🔥 禁じられた本のちにナチス政権は、この本を「国民の戦意をくじく」として禁じ、焼き捨てました。
- 🎬 3度目の映画化1930年のアメリカ映画はアカデミー作品賞を受賞。2022年版は、初めてドイツで製作された映画化です。
2022年版には、原作にはない休戦交渉の場面が加えられています。前線の兵士と、机の上で戦争の終わりを話し合う大人たちを対比させる構成です。
1917年のドイツ。17歳のパウルは、友人たちと軍に志願し、北フランスの西部戦線に送られます。
泥と雨の塹壕、飢え、次々に倒れていく仲間。年上の兵士カットとの友情だけが、心の支えになっていきます。
一方、政治家エルツベルガーは、戦争を終わらせるための休戦交渉に向かいます。停戦の時刻が決まっても、前線では最後まで戦闘が続いていました。
プロパガンダとは、人々の考えや行動を、ある方向へ動かすための宣伝のことです。
- ① 美しい言葉「英雄」「祖国」「名誉」。感情を強く動かす言葉が使われます。
- ② 見せない現実けが・死・飢えなど、都合の悪い事実は語られません。
- ③ 周りの空気「みんな行く」「行かないのは臆病者」という雰囲気が、一人ひとりの判断を押し流します。
映画の冒頭では、戦死した兵士の軍服が回収・修繕され、新しい兵士に配られる様子が描かれます。この場面は、何を伝えようとしているのでしょうか。
ドイツ出身の監督。原作の国ドイツで初めて製作された映画化で、自国が戦争に向かった歴史と向き合う作品として注目されました。
第95回アカデミー賞で、国際長編映画賞・撮影賞・美術賞・作曲賞の4部門を受賞しました。
希望に満ちた少年が、戦場で表情を失っていく姿を演じました。
パウルを支える年上の兵士。戦場での「生きる知恵」を教えます。
休戦交渉に臨む、実在の政治家を演じています。
タイトルの「西部戦線異状なし」は、「特に報告すべきことはない」という軍の報告の言葉です。
けれど、その「異状なし」の日にも、一人の兵士の命が失われているかもしれません。大きな組織の報告では「何もない」日が、一人の人にとってはすべてを失う日になる──タイトルには、そんな皮肉が込められています。
➡ 報道や発表の「言葉」と、その裏にある「一人ひとりの現実」。両方を見る目を持ちたいですね。
🌱 今日のまとめ
戦争は、いつも美しい言葉とともに始まりました。
- 原作は、作家レマルクの従軍体験から生まれた1929年の小説。
- 2022年版はドイツ製作。アカデミー賞4部門を受賞した。
- プロパガンダは、美しい言葉と見せない現実でできている。
- 「異状なし」の報告の裏にも、一人の命がある。
第一次世界大戦の休戦協定は、1918年11月11日の午前11時に発効しました。今でもヨーロッパなどでは、11月11日を戦没者を追悼する日としています。