巨大な新聞社を築き、世の中を動かした男が、死の間際につぶやいた言葉──「バラのつぼみ」。その意味を探る記者の取材から、男の人生が少しずつ明らかになります。この記事では、メディアを持つ者の力と、人を「情報」だけで理解する難しさを考えます。
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新聞、テレビ、そして今はSNSやネットメディア。メディアは、人々が「何を知り、何を考えるか」に大きな影響を与えます。
➡ では、そのメディアを一人の人間が思いのままに動かせたら、どうなるでしょう。80年以上前の映画が、その問いを投げかけています。
新聞王チャールズ・フォスター・ケーンが、豪華な大邸宅で亡くなります。最後の言葉は「バラのつぼみ」。
ニュース映画の記者トンプソンは、この言葉の意味を探るため、ケーンの元妻や友人、元部下たちに話を聞いて回ります。
証言をつなぎ合わせると、貧しい少年が大富豪になり、新聞で人々を動かし、政治家をめざし、やがて孤独になっていく一生が浮かび上がります。
- 📰 見出しが世論をつくるケーンの新聞は、刺激的な見出しで読者を集め、世論を大きく動かしていきます。
- 🗳️ メディアと政治新聞の力を背景に、ケーンは政治の世界にも進もうとします。
- 🪞 「正義」と「自分の都合」「市民のため」と言いながら、いつの間にか自分の欲や名誉のために新聞を使っていきます。
ケーンのモデルは、実在の新聞王ウィリアム・ランドルフ・ハーストだと言われています。ハースト側はこの映画を強く嫌い、自社の新聞で映画の宣伝を拒むなど、上映を妨げようとしました。メディアの力が、映画そのものにも向けられたのです。
この映画は、ケーンを知る何人もの人の証言(回想)を順番に見せていく構成になっています。
- ① 人によって見える顔がちがう友人、妻、部下。それぞれが語るケーン像は、少しずつ違います。
- ② 全部を知る人はいないどの証言も、ケーンの一部分しか語っていません。
- ③ 特集第1回『羅生門』とのつながり「一人の人・一つの出来事を、複数の視点から見る」という点で、2つの映画はよく似ています。
ラジオドラマや舞台で注目された若き才能で、この映画をつくったとき25歳でした。製作・監督・脚本・主演を一人でこなしています。アカデミー賞では9部門にノミネートされ、脚本賞を受賞しました。
手前から奥まで全部にピントを合わせる「パンフォーカス」や、下から見上げる大胆な構図など、新しい映像表現を生み出しました。
イギリスの映画雑誌が10年ごとに行う「史上最高の映画」の投票で、長年にわたって連続して1位に選ばれ、アメリカ映画協会(AFI)のアメリカ映画ベスト100でも1位になりました。
公開当時は興行的に成功したとは言えませんでしたが、のちに映画のつくり方そのものを変えた作品として評価されるようになりました。
🌱 今日のまとめ
メディアは、世の中を動かす大きな力を持っています。
- ケーンは新聞の力で世論を動かし、政治にも近づいた。
- モデルとされた新聞王は、自社の新聞で映画の上映を妨げようとした。
- 複数の証言を重ねても、一人の人のすべてはわからない。
- メディアの持ち主や見出しの付け方にも目を向けよう。
映画の最後に明かされる「バラのつぼみ」の正体は、物語の登場人物は誰も知らないまま終わり、観客だけが知ることになります。「どんなに情報を集めても、人の心の奥は見えない」ことを表しているとも言われます。